2024年6月21日・10団体呼びかけ政府交渉報告:福島原発事故被害者への医療費減免措置継続と健康手帳の交付を政府に迫りました

「福島原発事故被害から健康と暮しを守る会」は、脱原発福島県民会議、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室など10団体とともに政府交渉を呼びかけ、2024年6月21日、厚労省・環境省・復興庁と交渉を持ちました。福島原発事故被害者を中心に、長崎、関東、関西などからも約30名が参加し、「医療費等の減免措置」見直しの政府方針撤回と措置継続および国の責任による全ての福島原発事故被害者への「健康手帳」(医療費無料化等)交付を公開質問書に基づき政府に迫りました。

全国署名1万9,786筆を第二次提出(累計3万2,594筆),医療費等減免措置の継続を強く求める

冒頭に、「医療・介護保険等の保険料、医療費の窓口負担、減免措置の見直し方針撤回と、措置の継続、国の責任で全ての福島原発事故被害者に健康手帳(医療無料化)を求める」全国署名1万9,786筆(累計3万2,594筆)を、各省庁に第二次提出しました。「減免措置」削減が強行されて2年目に入る中、「来年度概算要求が出される前に、是非とも改めて反対の声を届けたい」と、今回、新たな集約分を提出しました。

提出にあたり、「守る会」の紺野則夫会長が、事故から13年経っても避難生活が続き、避難指示解除されても住民、特に子どもたちは戻れないという厳しい現状、帰還住民の多くが高齢者に留まる浪江町の実情を訴え、「医療費等、減免措置」の継続は不可欠である、国の責任で「健康と暮らしを守ってほしい」と改めて強く求めました。

厚労省・環境省・復興庁は、「国策による(原発事故)被害者」に「最後の最後まで国が前面に立ち責任持って対応」するという基本方針を遵守し、医療費等減免措置を継続せよ!

しかし、厚労省・保健局(国民健康保険課)は、これまでの交渉回答と同じく、「公平性」の観点から「医療費等、減免措置」見直すという方針の理由を繰り返し、方針撤回の考えはないと表明しました。そして、2023年の「減免措置」削減開始後には、対象地域の実情を見聞きすることは一切行っていないと、被害者無視の許し難い返答でした。そして、参加者が「放射能は広範囲に拡散され、避難指示区域で止まったわけではない。公平性と言うなら、指示区域外からの避難者にも同じような支援がされるべきだったのでは。」と問い正すと、「減免措置は、放射能被害に対するものではなく、避難に伴う経済的負担に対する支援」であり、「あくまで避難指示区域からの避難者が対象だ」と厚労省は開き直りました。参加者がさらに、「今後、病状が改善することのない高齢者は不安を訴えている。」「避難解除になったら『国策による被害者』ではなくなるのか!」等々、追及すると、厚労省・保健局担当者は、まともに返答できず、被ばくに対する施策は「環境省で検討されるもの」であり、自分たちは「関係ない」と逃げるだけでした。

低線量被ばくでも「健康手帳」を交付し、医療保障などの援護を行なう「被爆者援護法」に準じた
「新たな法整備」を福島原発事故被害者に!

厚生労働省原子爆弾被爆者援護対策室は、これまで「所管ではない」として交渉には出できませんでした。そこで、今回は原爆被爆者援護策に関する具体的質問を出して担当者の出席・回答を求めたので、原爆被爆者援護対策室の担当者は「援護法」に基づく施策〜「援護策」では、広島の爆心地から3.5km (推定外部被曝線量1mSv相当)以遠の区域でも交付されている、公費で年4回の健診が受けられる、医療費は基本的に公費負担、等々〜を具体的に説明しました。このことは、「福島原発事故被害者にも同じような施策を受ける権利がある」こと、「国は同様の施策を福島事故被害者に行う責任がある」ことを、被害者自身が改めて確認する機会ともなりました。「被爆者援護策の経験を活かし、『原爆被爆者援護法』に準じた、福島原発事故被害者のための『新たな法整備』を行うように。」との私たちの要請に対して、被爆者援護対策室からは、「所管ではないのでコメントする立場にない」、しかし「主管省庁の環境省の方からの要請があれば、対応していきたい」と、協力姿勢を示す返答がありました。原爆被爆者の闘いに学び、さらに運動を強め拡げ、政府の厚い壁を突き崩して行きましょう。

低線量被曝の健康リスクをより明らかにした国際核施設労働者調査(INWORKS)新報告を無視し「統一的基礎資料」改訂作業に反映しようとしない 環境省の責任逃れを許すな!

政府はこれまで一貫して、福島原発事故被害者の低線量被ばくによる健康影響は単なる「不安」であり、健康被害は起こらないかのように宣伝してきました。その根拠にしているのが「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」(「統一的基礎資料」)です。福島及び全国の研修など、リスクコミュニケーションで参照すべき資料に推奨され、活用されています。事実上、これは「政府の統一見解」のはずです。しかし、今回の交渉で、2023年8月に発表された国際核施設労働者調査(INWORKS)[2023.12.19交渉資料参照] で、低線量・低線量率被ばくの健康リスクがますます明らかになっていることを示して迫ると、環境省は、①「『統一的基礎資料』は政府統一見解ではない」、②「検討委員会」の事務局も含めて改訂作業を請負業者に丸投げしている、③環境省は成果物(改訂された『統一的基礎資料』)を受け取るだけだが、「発行主体としての責任」はあるという、無責任極まりない回答をしました。しかし、環境省は、参加者のさらなる追及を受け、「統一的基礎資料」の内容の「最終的な責任は環境省が持つ」と、返答をせざるを得ませんでした。

原発事故被害者とともに、全国の反原発運動とも繋がって、運動をさらに強め広げよう

「医療費等、減免措置」の見直し方針は、与党方針を受けた2021年の閣議決定「第二期復興創成期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針」に基づく施策として強行されています。これは、福島原発事故のような重大事故が起きてもその健康や暮らしの被害は「大したことない」、「10年経てば、被害はなかった」かのようにして、全国の原発を再稼働し、原発推進を進めて行こうとする政府方針とつながっています。今後も引き続き、福島県内外の多くの原発事故被害者をはじめ、全国各地で被害者支援に取り組む人々、反原発・反核運動、原爆被爆者・被爆二世運動、人権擁護運動、環境保護運動、等とも連帯し、その大きな力を背景に政府交渉にも取り組み続け、原発事故被害者支援切り捨て反対、国の責任で全ての原発事故被害者へ健康手帳交付など「被爆者援護法」に準じた新たな法整備を実現させましょう。全国署名をさらに拡大しましょう。

交渉内容の詳細は10団体からの「政府交渉報告」及び「政府交渉議事録」ご参照ください。

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